テーブルクロスもかけられていない、武骨な木組みのテーブル。
 その上に載っているのは、酒場で出されるような大作りのジョッキ。
 山盛りになった肉や魚の前で、思いもがけない歓迎を受けた遊牧民族の戦士たちは嬉しそうに
笑っていた。ジョッキを傾けながら、長椅子に座っているロルフに、次々と感謝の言葉を述べていく。
「さすがはロルフ様。ザントレイ子爵とすぐに打ち解けてしまうとは。こう言っちゃなんですが。
あの人、気むずかしくてねえ。やりにくかったんですよ」
 以前からウォーレム要塞に駐留していた戦士が嬉しそうにジョッキを掲げる。
「そうか? 顔を合わせて話し合えば、物がわかった武人だったが」
 それに答えながら、ロルフも雄牛の角で出来た酒杯を傾けた。中に入っているのは、ザントレイ子爵が
自ら注いでくれた、思い出の酒。アルコール臭がきつくて上等の酒とは言えなかったが、籠められた
意味は深い。
「神官の連中がうるさくて。馬が臭いから遠くにやれ、ここは密閉空間だとか。女に色目を使うな、
ここは蛮族が駆ける平原ではない、とか。ロルフ様が来てくれなかったら、二、三人斬り殺していた
かもしれませんよ」
「物騒なことを言うなよ、おまえ。ロルフ様に迷惑がかかったらどうする」
「あっ。そうか、いけねえ。飲み過ぎちまったかなあ。もう酔っぱらってらあ」
 仲間にたしなめられて、戦士の一人が舌を出した。
「構わん。俺もベルナール城では、さんざん神官たちに小言を言われた。追い出されなかったら、
十人やそこらは斬っていたかもしれん」
「がっはっは。そりゃ違いねえ!」
 ロルフの言葉に、戦士たちが大きな歯を剥きだして笑った。
 
 鹿の腿肉をほおばりながら、ルカが遠くのテーブルで派手に飲んでいるロルフたちを見ていた。
「すっごく大きいねえ。ほら、ネイト。あの人が隊長のロルフだって」
「強さは大したものだと聞いたよ。南にあるメログリーブ城、カフクレー砦、ウイングストン要塞、
その他諸々。あの辺りに出た大型幻獣はほとんど、あの人が追い払ったという話だからね」
 ウォーレム要塞の南に位置する要害を口にしながら、ネイトはロルフの武功を次々と上げた。
酒は飲めないので、ちびちびと茶をすすっている。
「すげえなあ。それだけ退治したら、大金持ちじゃねえか」
 羨ましそうにロルフの背中を見るラッド。彼もルカやネイトと同じテーブルにいた。手に持っているのは
大きなジョッキで、中には要塞の中で仕込んだエールが入っている。
「狩人じゃないからな。仕留めた幻獣は、ほとんど王に謙譲してしまったそうだよ」
「うへえ、もったいねえ。俺の捕まえる分だけ残しておいてくれればよかったのに」
「「マンティコアに追いかけられて半泣きになっていた男が、何を言っているんだか」」
 大きなことを言うラッドに、ネイトとルカの二人がそろってツッコミを入れた。

 その頃、ヒルダは裏の厨房で忙しく立ち働いていた。
「ヒルダさーん! 焼いた肉、なくなっちゃいました! あの異国人たち、食べるのが速すぎますー!」
 他の料理女たちが、ヒルダに向かって悲鳴を上げている。
「泣き言を吐くんじゃないよ。腹が空くのに国は関係ないんだからね」
 フライパンを振りながら、ヒルダは激を飛ばした。
 今日は遊牧民の連中だけでなく、ザントレイ子爵を初めとして要塞の人間も食べるペースが速い。
 運ぶのは兵士たちが手伝ってくれるが、焼いたり煮たりするのはヒルダたちの仕事だ。
 厨房は戦場のようになっていたのだが、その頃、別のところでは本当に戦場の話をしていた。
 
 特別に設けられた、ザントレイ子爵専用のテーブル。そこにだけは、きちんと白いテーブルクロスが
掛けられていて、載っているグラスも細工の細かいものだった。
「なるほどな。確かに、処刑をするにしては数が少なすぎるな」
 テーブルにいるのはザントレイ子爵と彼の腹心の部下、数人。
「ハインツに言われて、初めて気付いたのだが。いくら反乱を起こしたとはいえ、一つの軍団。
その構成員を全て処刑するなどということが有り得るだろうか?」
 対面の椅子にはロルフが一人で座っている。ベルナール王国周辺の地図を広げ、要所を指で
指し示しながら、ケルヴィオン民主統合国の不穏な動きを説明している。
「しかし、例がないわけではありませんよ。たしか一昨年前に、民主制の敵として辺境の民族を
大量に処刑していました」
「そうだ。それに軍団とはいえ、一つだけで我がベルナール王国が落とせると考えてはいない
だろう。実際に、前の戦役では痛い目を見たのだから」
 ロルフの意見に、側近たちが口を挟んだ。彼らは歴戦の勇士ばかりで、前の戦争では
クローヴィス3世と共に、侵略者であるケルヴィオン民主統合国を打ち払った経験がある。
「それにしても注意すべきではあるな。軍団全部を処刑するのに、本当に処刑人しか運んでいない
ようだ。他の軍団は全て、平時の配置についているようであるし」
 地図に書かれた情報を読みとりながら、ザントレイ子爵は顎髭に手をやった。酒はすでに抜け、
国境を守る要塞の指揮官の表情になっている。
「俺はケルヴィオン民主統合国をよく知らないから言うが、処刑されると決まって、おとなしく
首を落とされるのを待つものだろうか。動きが整然とし過ぎて気にくわないのだ」
 ロルフの言葉に、ザントレイ子爵はうなずいた。
「よし。斥候の数を増やすことにしよう。ウォーレム要塞を落とせるとは思えないが、
警戒しておくに越したことはない」
「では、騎士団より選出しておきましょう。何もないとは思いますが、ハインツ団長が信任
された戦士の言葉を軽んずるわけには参りますまい」
 騎士の一人が、ザントレイ子爵とロルフの顔を交互に見ながら言う。
「俺の方でも、部下に注意を呼びかけておこう」
 ロルフの言葉に、全員が重々しい表情でうなずいた。
 
 
「ねえねえ、ヒルダおばさん。この皿はどこにしまえばいいの?」
「あっちの棚に置いてちょうだい、ルカ。その杯はそっちにしまって、ラッド」
 料理女たちと手伝いに来てくれた者に指示をしながら、ヒルダは宴の後かたづけをしている。
「ヒルダおばさん。僕は何を手伝えば……」
「いいよ。ネイトは体が弱いからね。部屋に戻っておいで」
 ヒルダの言うとおり、ネイトは子供の頃は病弱でひ弱だった。だが、今は体力がない魔術師
とはいえ、ウォーレム要塞の軍人の一人である。
「子供扱いしないでください。僕だって、皿ぐらい運べますよ」
「一枚、二枚じゃ話にならないの。いいから、いいから。ネイトには、もっと別のことで役立って
もらうからね」
 ヒルダにとっては、ネイトはまだ子供のようだ。
 諦めたネイトは、肩を落として自分の部屋へと戻っていく。
「あ〜ぁ。ネイトでも、ヒルダおばさんには勝てないんだよなあ」
「あったりまえじゃない。私たちが子供の頃から、面倒を見てくれているんだから」
 ラッドとルカは、気の毒そうにネイトの後ろ姿を見送っていた。
 
 
 宴が終わって。
 酔いつぶれた男たちがテーブルに突っ伏して、幸せそうにイビキをかいている。
 そんな男たちを抱え上げて、片づけの邪魔にならないように部屋の隅に運んでいる男がいる。
 赤銅色の肌をした大男。鎧をつけてはいないが、ロルフだった。
「すまないねえ、手伝ってもらって」
 ロルフが男たちを運んだ先から、ヒルダがテーブルの上を雑巾で拭いている。
「構わない。他の者は帰してしまったのだろう。俺が手伝うのは当たり前だ」
 随分と遅くまで続いた宴だった。
 ロルフの言うとおり、料理女たちや手伝いに来た連中は、すでに自分の部屋に帰らせている。
 最後まで片づけるのは自分の仕事だと、ヒルダは一人で宴会場を掃除していた。
 そうしていると、仲間の戦士たちに埋もれるようにして眠っていたロルフが目を覚まし、
彼女を手伝い始めたのだ。
「こうして見ると、俺たちの部族の連中とあまり変わらないな」
 仲間の戦士たちと肩を組んで寝ている、ウォーレム要塞の兵士を見ながら、ロルフがつぶやいた。
「そうかも知れないねえ。暴れるだけ暴れて、酒を飲んで寝ちまう。男なんて、どこでも変わらないさ」
 にっこりと笑って、ヒルダが相づちを打つ。
「城の連中は堅苦しくてな。随分と苦労させられた」
「神経が細いんだねえ。そんなに大きな図体をしているのに」
 笑いながら、ヒルダがロルフの大きな背中を叩いた。その勢いで、ボタンで止められた布の下に
隠されている豊かな胸が大きく揺れたのだが、ヒルダは別に気にした様子もない。
 ロルフはひょいひょいと男たちを持ち上げては、部屋の隅へと置いていく。そこをヒルダが
素早く拭いていくので、広い宴会場の掃除もすぐに終わった。

「ふー。終わったねえ」
 額に浮いた汗をタオルで拭きながら、ヒルダは満足そうに笑っている。酔漢たちは壁にもたれかかって
眠り続けており、起きているのはロルフとヒルダの二人だけだ。
「お疲れ様。あんたも汗を拭きなよ。えーと……あんた、名前はなんだっけ?」
 タオルを渡しながら、ヒルダは尋ねる。
「ロルフだ」
「ああ、そうそう。ロルフだったね。私の名前はヒルダ。あんたたちの飯を作っている女さ。
子供たちは私のこと、ヒルダおばちゃんって呼ぶけどね」
「ヒルダか。わかった。これから、よろしく頼む」
 ロルフは首元の汗をタオルでぬぐいながら答えたが、なぜかヒルダは顔を彼から背けている。
「どうした?」
「い、いや、なんでもないよ。それじゃ、私はあっちで着替えてくるからね」
 逃げるようにして厨房の方へと去っていくヒルダの背中と揺れる尻を見ながら、ロルフは
汗を拭き続けていた。


 カリカリカリカリカリ……。
 その頃、ネイトは昼の遅れを取り戻すべく、机に向かっていた。
 カリカリカリカリカリ……。
 耐えることのないペンの動きが、室内に響いている。
 そのペンの動きを、興味深そうに追っている視線。ネイトはまったく気付いていないが、侵入者が
部屋に入り込んでいた。ネイトの背中の後ろで揺れる栗毛色の髪と長く伸びた耳、そして細く
釣り上がった目……それは昼間にラッドを拒んだ女エルフ、エミリアだった。
(幻獣の変成について……人間って、変なことに興味を持つのね)
 そう思いながら、ネイトの書いている論文を暇つぶし代わりに読んでいたのだが、これがなかなかに
面白い。論理や学問という時間がかかるものは、エルフにとっては馴染み深いもので、エミリアも
その例外ではなかった。
(へえ……こんな考え方も出来るんだ。確かに、仮説としては面白いわね)
 著述に没頭しているネイト。その後ろで、早く続きを読みたがっているエミリオ。
 どちらも、夢中になっていた。
 
 
「年甲斐もないねぇ。男を見て熱くなっちまうなんて」
 苦笑しながら、ヒルダは胸のボタンを外して上着を脱いだ。豊かに張り出した胸がユサユサと
揺れながら、惜しげもなく引っ張り出される。濃い薔薇色に染まった乳首は、ロルフの太い首筋を
見たせいか充血していて、恥ずかしいぐらいに膨らんでいた。
 一瞬、それに見とれるヒルダ。
 だが、すぐに我に返って、赤くなった顔を激しく横に振った。
「やめ、やめ! いい年をして、何を考えているんだか!」
 自分自身を叱責しながら、ヒルダは乳房の下にたまった汗をタオルで拭き取とろうとした。
自分の乳房に手をあてがって上に引っ張ってから、付け根にタオルをあてがう。
「独り身じゃ大きくたって得することはないよ」
 胸の付け根にたまった汗を拭き取りながら、ヒルダは苦笑する。汗を溜めていた場所に乾いた布が
当たって、気持ちがよかった。
「ふぅ……ひゃあ!」
 心地よさそうに溜め息をついていたヒルダが突然、悲鳴を上げる。
 いつの間にか、彼女の胸に大きな手が貼り付いていたのだ。
 ぐにゅ、ぐにゅぐにゅ。
 ヒルダの背中から回されているだろう手は、無造作に彼女の乳房を揉みしだく。
「はうっ! ……だっ、誰だい! こんな悪さするのは……」
 気丈な性格のヒルダは、胸をつかまれたままで後ろを振り向こうとする。その耳のすぐ近くで、
男の声が響いた。
「心配するな。俺だ」
 声の主は、先程まで彼女を手伝っていたロルフだった。それに気付いて、ヒルダの耳が根本まで
赤く染まり、声を荒げて文句を言う
「なっ、なにやってんだい! あたしみたいな年増に……はあぅ!」
 ぐにゅ、ぐにゅぐにゅ。
 ロルフは返事をする代わりに、さらに激しくヒルダの胸を揉みしだいた。浅黒い指につかまれて、
ゴムマリのように変形する乳房。どこまでも柔らかいのに芯が残っている感触に刺激されて、
ロルフは彼女の乳首に指をかける。
「はぁ、はぁ……ひゃう!」
 胸を容赦なく揉まれて荒い息をついていたヒルダが、ラズベリーのように固く尖っている乳首の
回りをなぞられて、まるで小娘のような嬌声を上げた。
「やっ、やめなって……あんた、隊長なんだろ……はうっ!」
 ヒルダは肘を押しつけて、自分の胸を無遠慮にいじめているロルフから逃れようとしたが、
家事労働で鍛えた彼女の力でも、彼の腕を振りほどくことはできなかった。
 暑さではなく、熱さから染み出た汗が、ヒルダの体に滲んでいく。
 ぐにゅ、ぐにゅぐにゅ。
 揉まれ続けて生き物のように蠢き続ける乳房。ヒルダの目が、険しさよりも潤みを増していく。
「おまえを抱きたい」
 耳元で、ロルフがつぶやいた。
「あっ……」
 ヒルダの体から力が抜け落ち、カクンと膝が折れた。
 屈み込むようになって、ヒルダの体が前のめりに厨房の床に倒れる。それに折り重なるように
ロルフも膝を曲げて、なおも彼女の胸を激しく揉み続ける。
「はぁ、はぁううううっ!」
 男の簡潔な欲求に理性の歯止めが外れたのか、ヒルダは真っ赤な唇を大きく開けて悶える。
 ズルッ。
 ロルフの手が、おもむろに彼女の履いていたズボンを、下着ごと膝のところまでずらした。
「あっ、ちょ、やめ……くぅ!」
 敏感な狭間に、いきなり太い指を差し込まれて、ヒルダは唇を噛んだ。
 熟れきった胸はまだ揉まれ続けており、その刺激を受けて流れ出た愛液はロルフの指を
スムーズに侵入させる。肉の壁と指に擦られて、ヒルダの中が湿った音を立て始めた。
 ぐちゅ、ぐちゃぐちゅ。
 最初から激しい勢いで出し入れが行われ、ヒルダの背中が丸まっていく。
 熟し切った花弁はロルフの太い指を淫らに飲み込んでは吐き出していた。
「ひゃう! はぁう! はぁぁうう!」
 入り口のところが特に敏感なのか、指の先が入り口に引っかかる度にヒルダは大きな声を
上げる。その体からは汗が噴き出て、ところどころに出来た豊満な肉の谷間に溜まっていく。
 ぐちゅ、ぐちゃぐちゅ。
 何分経ったのだろうか。ヒルダは手をロルフの前に掲げて、かすれた声を出した。
「はぅぁああ! ……わっ、わかった。わかったから、ちょっと待ってよ……くぅん!」
 つぽ。
 無造作に、ロルフはヒルダの膣から指を抜いた。
 そして、自分が履いていたズボンを引き下ろす。そこから現れたのは、隆々と立ち上がった
巨大な剛直だった。肩越しに様子をうかがっていたヒルダの目が、大きく見開かれる。
「……」
「入れるぞ」
 ロルフは剛直の根本を握って、ヒルダの陰口に先をあてがおうとした。
 ごくりとヒルダの喉が鳴ったが、彼女は急に倒れ込んで、四つん這いから横向きの姿勢に
なった。目標を失ったロルフが、怪訝そうな顔で彼女を見ている。
「はあ、はあ……ちょっと待ってなって。逃げやしないからさ」
 力の入らなくなった手足を動かしながら這うようにして、ヒルダはロルフから離れていく。
 彼女が目指しているのは、厨房の下にある棚。
 棚の中には、油や調味料などの液体が詰まった瓶が並んでいる。
「えっと……これ、これ。馴染まさないと入らないからね」
 ヒルダは慣れた手つきで、油が入った瓶を棚から取り出した。そして、また這うようにして、
ロルフのところに戻ってきた。
「何に使うつもりだ?」
 相変わらず怪訝そうな表情のロルフに、ヒルダは妖しい艶を帯びた微笑みを返す
「ねえ、ロルフ。あんた、お尻で女を愛したことがある?」
「尻?」
 厨房に立っているロルフの巨体を、床に這いつくばったままで見上げているヒルダ。
 彼女の尻が、媚態を示すように、ゆっくりと震えた。


 カリカリカリカリカリ……。
 相変わらず、ネイトは一心不乱に論文を書いている。
 カリカリカリカリカリ……。
 室内に響き続けるペンの音。
 エミリアは、その後ろで保存食である干し果物を囓っていた。
(精気を補給するだけのつもりだったけど。しばらく、ここにいるのも面白そうね。いい隠れ場所も
見つかったことだし)
 集中しきっているネイトは、自分の後ろに女エルフがいることには少しも気付かない。
 干し果物を食べ終わると、エミリアは再びネイトの背中に近寄って、その向こうにある机の上の
論文に目を通し始めた。
(へえ……やっぱり、面白い。人間って、粗暴で馬鹿な連中だと思っていたけど。こんな奴も
いるのね)
 幻獣の変成と、それが起こる理由。
 論文の内容は幻獣の生起の謎にまで及んでいて、読む方を飽きさせない。
 調子に乗って、ネイトの横顔を盗み見てみたが、彼は一向に気付きそうになかった。
 灰色の髪に痩せた体。光る汗が伝う顔は、童顔だが整っている。
 量は多くなさそうだが、見栄えは上等の部類に入る。きっと、精気も味の良いものだろう。
(やっぱり、ここにいようっと。いろいろとお楽しみもありそうだし)
 音を立てないで、エミリアはくすくすと笑った。
 
 
 横向きに寝ころんだヒルダが尻の肉を持ち上げて、狭い茶色のつぼみを見せている。
「尻か……そういう楽しみ方があると聞いたことはある。だが、やったことはない」
 濡れそぼった濃い赤の陰唇と、その近くにある菊門を見比べながら、床に座り込んだロルフは
困惑していた。比べて、ヒルダは赤い唇に舌を這わせながら、余裕の笑みを浮かべている。
「そうだろうね。あんたみたいに大きなモノだったら、経験はないと思っていたよ」
 ヒルダの潤んだ視線は、ロルフの剛直に向けられていた。
「普通にやらないか?」
 ロルフの問い掛けに笑って首を横に振りながら、ヒルダは髪の留め金を外す。意外に
長い彼女の髪が、そのまま床に広がった。
「大丈夫。慣れればね。ここは腕だって入っちまうんだよ」
 ヒルダはそう言いながら、油の入った瓶のフタを開け、中に詰まっている油を手の平の上に
たっぷりと垂らす。愛液とは違うヌメヌメとした輝きが、指の間を糸を引いて伝っている。
 油を垂らした手を体の上で滑らせて、ヒルダは自分の尻の穴に人差し指を当てた。
「はう!」
 つぷぅ。
 狭いすぼまりに、音を立てて油がついた指が入っていく。ロルフが予想していたような
抵抗はなく、ヒルダの指は根本まで中に入ってしまった。
「はぅ……はぁん……」
 そのまま、ヒルダは気持ちよさそうな声を上げながら、尻の中に入れた指を回していく。
 つぷぅ、つぷぅ。
 油が中に染み込んでいっているのか、尻の穴は次第にほぐれ、隆起してきた。
「くっ……」
 ヒルダが二本目の指、中指をすぼまりの中に差し込んだ。さすがに最初の頃は苦しそうに
眉を曲げていたが、指が三回も尻の中で回ると、表情は再び喜悦を帯びたものに変わっていく。
 つぷぅ、つぷぅ、ぬちゅ、にゅつ。
 指はゆっくりと回転を繰り返しながら、出し入れも加えられている。
 尻の穴でも気持ちがいいのか、ヒルダの陰唇は愛液を滴らせながら、潤みを増していった。
 会陰部を伝う愛液と油が混じり合って、肛門の回りはなんとも言えない滲んだ光を放っている。
「入るのか?」
 まだ疑わしそうに、それでも興奮した面持ちでヒルダの痴態を眺めているロルフ。
「うふふ……入るよ。でも、もう少し待ちなよね……はぅ……」
 ヒルダはロルフに見せつけるようにして、つぼみの中に入れたまま、二本の指を大きく
広げた。そこはロルフが見慣れている女の陰唇の奥よりも鮮やかなピンク色で、いかにも
狭そうに見える。
「はぅ、はぅ、はぅあああ……」
 にちゅ、にゅつ、ぐちゅ……。
 ヒルダの尻の中に入っている指が三本に増えていた。
 どれだけの油が染み込んでいるのか、つぼみは開ききっていて、ヒルダが指を広げなくても
中の肉壁の色が確認できる。
「ねえ、ロルフ。あんたの準備もしないといけないから。後は、あんたがやってくれるかい?」
 さらに油の瓶の中身を余った手の上に垂らしながら、ヒルダは潤んだ目でロルフに微笑みかけた。
「わかった。いいんだな?」
「もちろん。あんたの指が入るくらいには広がったからね」
 寝そべったままでロルフに油の瓶を手渡すと、ヒルダは尻を向けたままで、床に座っている
ロルフの体に自分を寄せていく。
 ヒルダの脚がロルフの脇腹に当たり、そのまま胸板を伝って、肩のところまで伸びていく。
「そのまま、後ろに倒れ込んで」
 言われたとおり、ロルフは上半身を後ろに倒して、仰向けに寝転がる。
 油と汗、そして愛液に濡れたヒルダの体がロルフの胸板を伝って滑っていく。
 なんとも言えない肉の柔らかい感触に、思わず身震いするロルフ。その彼の顔の前に、
ヒルダの大きな尻が迫ってきた。
「あたしは、あんたのモノを湿らせておくから。あんたは、あたしの後ろをいじっていて」
 ヒルダはそう言うと、頬にかかった髪を掻き上げて、ロルフの剛直に舌を這わせ始めた。
 トロリ。
 油の瓶から中身を手の平に垂らすと、粘性の高い油がロルフの大きな手いっぱいに広がった。
傷つけないように注意しながら、ロルフは広がり始めたアナルに指を入れる。
 ぬちゅちゅちゅ。
 まるで生き物のように吸い込んでいく動きにロルフは一瞬、指を止めたが、自分の剛直を
一生懸命に奉仕してくれているヒルダに応えようとして、指を奥まで押し込んだ。
「はふぅ!」
 剛直に舌を這わせていたヒルダの体が、大きく震える。
「気持ちがいいのか? 尻が?」
「えっ、ええ、そう。主人とは、ここでばかりだったよ」
「そうか」
「もう死んじまっていないけどね……ひゃふ!」
 沈みそうになったヒルダの感情が、ロルフの指の動きで再び快感を求めるものに変わっていく。
 にちゅ、ぬつ、にゅつちゅ。
 油は充分にヒルダの腸の中に染み渡っている。試しに指をかけてみると、性器と化したすぼまりは
ゆっくりと広がり始めた。
 ヒルダの舌はロルフの亀頭の回りを這っている。もう、充分に湿っただろう。
 準備が整ったことを悟ったロルフは、上半身を起こした。濡れ、湿ったヒルダの体はロルフの上を
滑っていき、そのまま落ちていって、彼の前で尻を高く掲げるようにして止まった。
「……んっ。もう大丈夫だろうね」
 期待と欲望に満ちた視線を投げかけながら、ヒルダはうなずく。
「だろうな。では、入れるぞ」
 剛直は興奮で鉄のように固くなっている。
 四つん這いになったヒルダの尻をつかむと、ロルフは彼女のアナルに自分の剛直をあてがった。
そして、ゆっくりと腰を前に突き出していく。
 ぎゅちゅ、ちゅちゅ。
「くっ……うっ、ううっ!」
 放射状に広がった肉の輪の抵抗は、思ったよりも大きかった。
 亀頭の先が入ったところで、ヒルダは苦しそうな呻き声を上げる。だが、ロルフはより強く
彼女の大きな尻をつかむと、さらに腰を前に突き出した。
 ぐぎゅちゅちゅつ!
 肉の輪が開いた。
 亀頭が入ると、剛直はそのまま吸い込まれるようにして、半分くらいまでヒルダの中に入っていく。
「はぐぅあああっ!」
 ヒルダが目を剥いて、辛そうに悲鳴を上げた。
「おい。大丈夫か?」
 今まで抱いてきた女たちの中とは比べものにならない締め付けを剛直に感じながら、ロルフは
ヒルダの髪を撫でた。今も奥まで吸い込もうとする肉の輪の動きは気持ちよかったが、彼女が
あまりに苦しがるようであれば、すぐに抜くつもりだった。
「……だ、大丈夫よ。んっ、動いていいよ、ロルフ」
 ヒルダの白い尻に突き刺さっている、ロルフの黒ずんだ剛直。
 やや肉のついた背中には噴き出すように汗が浮かんでいる。
 淫猥な光景だった。
「わかった」
 ロルフは手に余るヒルダの尻の肉をつかんで、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「は…ぁぁ……っは、ふぅぅ……んんっ」
 油にまみれた剛直が自分の中から引きずり出される度に、ヒルダは切なげな声を上げる。
 にちゅ、にちゅ、にゅつ……。
 アヌスの回りを滴っている油が、剛直の根本と尻の間でぬかるんだ音を立てている。
 しばらく前後していると、ロルフは腰を止めた。
 彼が感じているのは、ヒルダの腸の中の意外なほどの空洞感。
 根本はきつく締め付けているのに、先にはほとんど刺激が来ないのだ。
「うふぅ……どうしたんだい、ロルフ?」
 四つん這いのままでヒルダは、振り返って背中越しにロルフを見る。ヒルダの顔は赤く上気していて、
強い快感を得ていることを物語っていたが、対して、ロルフは困ったような顔をしている。
「確かに、締め付けは強いが、締められるのは根本ばかりで、あまり気持ちがよくない。
やはり、普通にやらないか?」
 そう言いながら、ロルフはヒルダの陰門に太い指を這わせた。そこはすでに濡れそぼっていて、
彼の剛直を楽に受け入れることが出来そうだった。
「奥まで入れ過ぎるからだよ。ちょっと待っていなよ……」
 ロルフが何かを言おうとする前に、ヒルダは息み始めた。四つん這いの姿勢で床に這わせた手を
固く握り、歯を食いしばって、まるで不浄の時のように菊門を広げている。
 ぐりゅ、ぎゅる、ぐる……。
 腸の内壁が動き、根本までヒルダの腸の中に刺さっていたロルフの剛直が押し出され始めた。
 うごめく肉の壁にまとわりつかれ、それまで刺激の少なかった先端の方にまで刺激が走った。
「くっ」
 その予想もしなかった快感に、ロルフは歯を食いしばって耐える。
「んっ、んん〜!」
 ずりゅ、ずりゅ、ずりゅりゅ!
 ヒルダがいきむ度に、少しずつ、少しずつロルフの剛直は、彼女のアナルから姿を現してきた。
「んっ、んんん〜〜……んあっ!」
 茶色の皺を大きく広げ、押し出された剛直。それは亀頭のカリのところで引っかかり、ようやく
後退を止めた。大きなカリに入り口を引っ張られて、ヒルダがうめいた。
 そして、息むのをやめると、再びロルフを振り返る。
「んんっ……どうだい。先の方が締め付けられて、気持ちいいと思うけど」
 先程まで根本を締め付けていた入り口は、下がってきたロルフの剛直の先を痛いほどに締め付けている。
「なるほど。これなら気をやることが出来るな」
 ロルフはきつい締め付けを我慢しながら、大きく広がっている茶色の皺に指を這わした。
「ひゃう!」
 膣や陰核よりも菊門の方が性感が強いのか、ロルフの太い指がアヌスの縁を這うと、ヒルダは
腰をくねらせながら、大きな声を上げ始める。
 それに勢いづけられたのか、ロルフは剛直の先の部分を出し入れし始めた。
 腰を引いての動きは難しかったが、慣れてくると、ロルフの動きはドンドン速くなっていく。
「はぁう! はぁぁうう! いや、ちょ、つっ、強すぎっ!」
 ずりゅずりゅずりゅ!
 ストロークは短いが、前の方を突くときと変わらない回転数でロルフの腰が動く。
 パスン! パスン!
 ヒルダの乳房が大きく揺れ、柔らかい打撃音を立て始めた。
「ああう! くううう! はぁう!」
 きつい締め付けは剛直のカリのすぐ下の部分に強い刺激を送り、ロルフの動きをさらに速くしていく。
「あああっ! ひゃあ! ふんんっ!」
 お互いに絶頂が近いのか、ヒルダの背中は小刻みに震え始め、ロルフの剛直はふくれ上がっていった。
「いっ、いくんだろ? ロルフ、最後は奥まで突いて……はぐうううう!」
 ヒルダの求めに応じて、ロルフは一気に腰を突き出した。
 油に滑った剛直は、ようやく元の狭さを取り戻そうとしていた腸壁を掻き分け、奥へ奥へと進んでいく。
「ああああああっ!」
 ヒルダの爪が厨房の床を引っ掻き、絶頂は彼女の体を砕けそうなほどに大きく震わせる。

 ビュク! ビュク! ビュク!

 絶頂がヒルダを覆った瞬間、ロルフも快感を解き放ち、彼女の腹の奥に熱い精液を大量に放ち続けた。


 ヒルダは力尽き、大きな乳房をつぶして、厨房の床に寝そべっている。
 その背中に重なっているのはロルフ。
「……どうだった? 気持ちよかっただろ?」
「ああ。気持ちがよかった」
 二人は、まだアヌスでつながっていた。
 ぷくっ。
 少し柔らかくなった剛直と肉の輪の間から精液が漏れ出て、白い気泡を作っている。
 ヒルダの髪を撫でているロルフの手。
 その体温を感じながら、彼女は嬉しそうに笑う。
「いいのかい? 私みたいな年増を相手にしてさ」
「そんなことはない。それよりも抜くぞ」
 無愛想に答えたロルフが床に手を着き、ヒルダの菊門から剛直を引き抜こうとした。
その動きを、ヒルダが止める。
「ちょっと待って、ロルフ。抜くんなら、尻をつねった方がいいよ」
「なぜだ?」
「いいからさ、ほら」
 そう言うと、ヒルダは自分で尻を指で強くつねった。
「イタっ!」
 当然のように尻を襲う痛みに、ヒルダは顔をしかめる。
「なにをやっているんだ……むっ?」
 疑問を浮かべながら剛直を引き抜いていたロルフは、強い締めつけを続けてくる茶色のすぼまりに
驚きの声を上げた。それは剛直全体、尿道まで締め付け、まだ中に残っている精液を絞り取っていく。
 ずぽっ!
 剛直が肛門から引き抜かれて卑猥な音を立てた。精液は全てヒルダの腸内に入っていた。
「なるほどな」
「上手に絞れただろ? さて、それじゃ、後かたづけをしないといけないね」
 ゆっくりと立ち上がって、ヒルダは艶然と微笑む。
 その太股をつたって、油と愛液と精液の混ざったものが、ゆっくりと滴り落ちていった。






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