閃光が斜め上から走る。
 ガシィン!
 ニコラはそれを受け流して果敢に前へと進み出るが、早くも二撃目が胴体を襲った。
「せいっ!」
 避けるのではなく、肩から相手の体にぶつかるように体当たりをして、攻撃が当たる前に
姿勢を崩させる。
「とぉっ!」
 ブゥン!
 ニコラの振りかぶった剣が、空気を裂いて音を立てる。
「まっ、まいったっ!」
 訓練用の剣が振り下ろされる前に、訓練場の地面に倒れた少年は降参した。
 オカッパ頭をした少年ニコラは、降参の声を聞いて、荒い息をつきながら剣を下げる。
「いい動きをするようになったな、ニコラ。一年前の臆病な姿はどこにいった?」
 その姿を見て、嬉しそうに話しかけてきたのはハインツ。
 今日も45度の角度を保った髭を揺らしながら、鎧姿で部下たちを訓練しているようだ。
「ええ。臆病な僕は、どこかに行ってしまったようです」
 自信に満ちあふれた言葉に、ハインツの顔が緩む。
 五年前、まだニコラが本当に子供だった頃、彼は痩せた小柄な男の子だった。
 親友に世話を任されたハインツは、本当にニコラが騎士になれるのか首をひねったものだ。
 戦闘において、小兵であることは絶対的に不利だ。
 一撃の重さ、リーチの長さ、スタミナ。
 その不利な条件を、この小柄な少年は努力と精神力で補ってきた。
 太くなってきた腕に合わせて、最近は度胸もついてきている。
 まだ背は高くならないが、実力は若い騎士としては充分。
 安心して王の御前に出せる。
「そうだろうな。あの恐ろしい顔をしたロルフと毎朝、打ち合っているのだ。臆病など、
どこかに逃げ出してしまうに違いない」
「あっ……その、御存知だったのですか?」
 ばつの悪そうな顔で、ニコラはハインツの顔を見上げた。
 宮廷の作法というものを守らないロルフは、王妃と神官たちの受けが悪い。
 ハインツも、ロルフのことを良く思っていないのは、城では有名だった。
「別に構わん。大いに結構。牙が生えた鬼と打ち合う。我が輩も思いつかなかった訓練方法だ」
 カカカ、とピンと張った髭を揺らして、ハインツが笑う。
 ロルフとの確執は、昨日の手合わせで、どうでもよくなってしまった。
 あの男にはあの男なりの規律というものがあるのだろう。
 そう納得すると、むしろニコラの面倒を見てくれているロルフの存在が有り難くなってくる。
「牙が生えた鬼……はい、そうですね。ロルフ様はとても強いです」
「そうだろう。我が輩と引き分ける男、つまりベルナール王国で一番強い男の一人だ。
おまえは果報者だ、ニコラ。いつかは我が輩たちよりも強くなって、その恩に報いるのだぞ」
「はっ、はいっ!」
 いい返事をする。
 ハインツは自分の息子を見るような表情で、ニコラの真剣な返事を受け止めていた。

 その様子を、勉強部屋の窓から、ユリアーネが羨ましそうに見ている。
「いいなあ、私も剣を持ってみたい」
 物騒なセリフだが、ユリアーネの非力な腕では訓練用の剣も持ち上がらない。
 これは、私も外で遊びたい、ぐらいの意味だろう。
「ユリアーネ姫。まだ講義の途中ですよ」
 政治学の教科書を片手に持って、ユリアーネの机の向かい側に座っているメイベルが、
窓の外を見ているユリアーネを咎めた。
 丸眼鏡の奥の瞳が、冷たく光っている。
「臣下の様子を見ていただけです。これも王族の勤めですから」
 ユリアーネも負けていない。青い瞳で、白い司祭の服を着たメイベルを見返している。
「ユリアーネ姫。今のあなたの勤めは、将来の女王としてふさわしい知識と知恵を身につける
ことです。違いますか?」
 だが、迫力では一回りも年齢が上の家庭教師メイベルの方が上のようだ。
 ユリアーネは下を向いて、黙り込んでしまった。
「では続けますよ、ユリアーネ姫」
 朗々とメイベルが教科書を読み上げ、適切なコメントを加えていく。
 ユリアーネはそれを聞きながら、必要なところはノートを取り、わからないことは質問
していく。その質問はいつも鋭くて、メイベルが答えにつまりそうになることもよくある。
(頭はよろしいのだから、もっと真剣に勉学に取り組んでくれればいいのだけれど)
 ふくれっ面になっているユリアーネの白い頬を見ながら、メイベルは溜め息をついた。
 
 
 小休止。
 夕方までは自由時間だ。
 勉強机から開放されたユリアーネは、嬉しそうに石造りの窓から吹く風を受ける。
「気持ちがいい風。このまま、私もどこかに飛んで行ければいいのに」
 窓のずっと下に見えるのは、城の各施設をつなぐ回廊。
 偶然にも、赤銅色の肌をした大男が、その回廊を歩いていた。
「まあ、ロルフ。ご機嫌よう」
 嬉しそうに大声を上げて、ユリアーネが手を振る。それに気付いたのか、ロルフが顔を
上げた。それが何だか嬉しくて、ユリアーネは何度も手を振った。
「何の用事だ」
 面倒くさそうに答えるロルフに、ユリアーネは大きな声をあげる。
「また、異国の話を聞かせてください。約束してくださいましたでしょう」
 城の中に響きそうな大声。誰かに聞かれると厄介なことになると思ったロルフは、
手を横に動かして、ユリアーネに合図をした。
「どいていろ。今から、そこに行く」
「えっ? どうやってですか?」
 ユリアーネが今いる場所は城の中央施設で王族がいる場所である。
 その場所に行くには衛兵が見張っている階段を上らなくてはいけない。
「いいから、どいていろ。危ないぞ」
 疑問に思いながら、ユリアーネがわずかに身を引く。
 途端、ロルフの巨体がユリアーネのいる階の窓まで、一気に飛んできた。
「きゃあ!」
 驚いて、ユリアーネが悲鳴を上げる。
 大男のロルフが、こんなに身が軽いとは思わなかったからだ。
 窓枠に手をかけると、ロルフは軽々と自分の巨体を部屋の中まで押し上げ、
ユリアーネが待っていた中央施設の廊下に入ってくる。
「とても身が軽いのですね。信じられない……」
「腕力だけでは戦士にはなれない。当たり前のことだ」
 青い目を丸くして自分を見るユリアーネに、ロルフはぶっきらぼうに答えた。
 子供とはいえ王族の自分にそんな態度を取るロルフの存在が珍しくて、ユリアーネの
声が弾む。
「また異国の話を聞かせてもらえるのですね、ロルフ」
「何度も訓練場に忍び込まれては困るからな」
 窓枠に座ったままで、ロルフはユリアーネに自分が生まれ育った国の話をし始めた。
 
 馬と共に生き、馬と共に死ぬ人生。
 自然の厳しさ。
 家屋というものを持たない遊牧民の独特の風習。
 
 メイベルの授業を受けていた時とは全く違う明るい表情で、ユリアーネはロルフの
言葉を聞いている。
「ロルフ。早く、次の話をしてください」
 何度も話をせがむ姿は、まるで童女のようだ。ロルフは面倒くさがりながら、
それでも真面目に、ユリアーネの願いに答えていく。
 城の外に出ることもなく育ってきたユリアーネにとって、本当に楽しい時間。

「なっ、なにをしているのですか!?」

 それはメイベルの悲鳴のような声によって、中断させられた。
「ユリアーネ姫! その者に近寄ってはならないと、あれほど申しましたのに」
 あわてふためいて、メイベルが脚にまとわりつく司祭服を揺らしながら走り寄ってくる。
「どうしてですか、メイベル。ロルフは、私に異国のことを教えてくれているのに」
 何も悪いことはしていない。
 しかし、メイベルは眉と丸眼鏡の奥の目を釣り上がらせて怒っている。
「駄目です。近寄ってはなりません。ロルフ! あなたも臣下の礼と言うものを……」
 矛先が自分の方に向く前に、ロルフは窓から飛び降りて回廊に着地すると、どこかに
走り去ってしまっていた。つむじ風のような動きだ。
「まあ、本当にすごい」
 メイベルのお小言はまだ続いていたのだが、そんなことも忘れて、ユリアーネはロルフが
消え去った窓の外を眺めていた。
 
 
「尼僧というのは苦手だな。どうも、可愛げがない」
 目を剥いて怒っているメイベルの顔を思い出しながら、ロルフは城の廊下を散歩していた。
 好奇心いっぱいの目を向ける子供、潤んだ瞳で見つめる女、汚いものを見るかのような視線を
向けてくる役人。城の中にはいろいろな人間がいる。
(ここにいるのは飽きたな。馬に乗って駆け回りたい)
 城暮らしを初めて一ヶ月になるが、こんな狭苦しい石の建物の中で暮らしている連中の
気持ちが、ロルフには理解できなかった。
(どこかで、また幻獣が暴れてくれればいいのだが)
 そんなことを思いながら、ロルフは目的もなく城の中をぶらついていた。
 クイ、クイ。
 誰かが、ロルフの着ている服の袖を引っ張っている。
 振り向くと、黒い瞳がロルフを見つめ返してきた。
 細身で、清楚な顔立ちをしたメイド、ステラ。
「何の用事だ」
 ロルフが尋ねると、ステラは服の袖をつかんだまま、ロルフを柱の影へと引っ張っていった。
 何かを期待しているのか、その頬は上気していて赤く染まっている。
「ロルフ様。今日は、お申しつけくださらないのですか?」
 柱の影にかくれると、ステラはロルフの胸に顔を寄せ、熱のこもった声で呼びかける。
「部屋で待っていろ。すぐに行く」
 ステラの黒い髪を耳元まで掻き上げると、ロルフはささやいた。
 こくん、と嬉しそうにうなずき、ステラはロルフの部屋に向かって駆けていく。
 可愛らしいものだ。
 ロルフはどんな風にステラを抱こうかと考えながら、別の場所へと歩いていった。
 
「今朝、蛮族の男がユリアーネのいる場所まで忍び込んだそうです」
 冷たい氷のような声で、王妃の席に座ったミルダラがクローヴィス3世に告げた。
「ほう。衛兵の目をかいくぐったか。大したものだ」
 王座に座ったクローヴィス3世はミルダラの青い瞳を楽しそうに見つめ返しながら、
冗談めかした答え返した。
「王。ふざけている時ではありません。世継ぎであるユリアーネの身に何かがあったら、
どうなさるつもりなのですか」
 ミルダラのきつい声に合わせて、彼女の水蜜桃のような大きな胸が柔らかく揺れる。
「そう怒るな。ロルフは私が目をかけて、特別に連れて帰ってきた男だ。本人も、
その意味は承知している」
「ですが……」
 何を言おうと、クローヴィス3世はミルダラの言うことを取り合わない。
 確かに、ロルフと彼の部下たちは強い。
 彼らが国中を駆け回ったおかげで、今年は幻獣の被害に悩まされる街や村が極端に
減った。積み重ねられた幻獣の角や翼を見て、クローヴィス3世が喜びの声を上げたのは
一度や二度ではない。
「あの者は異国の人間なのです。いくら有能とはいえ、そのことを忘れないで下さい」
 刺さるような視線と冷たい言葉でミルダラが訴えかけてくる。
(なにが、そんなに気に入らないのか。あの者のおかげで領民の苦労は格段に減ったではないか)
 クローヴィス3世は、ロルフがユリアーネに絶対に手を出すことはないと確信していたので、
ミルダラの悩みはわからなかった。


 その頃。
 ロルフは、ステラを抱く前に体を洗うため、浴場に来ていた。
 すると、先客にカルトンがいた。
「ああ、これはロルフ殿。昨日はお疲れ様でした。ギャミルが大変喜んでおりましたよ。
あれほど短期間で幻獣が変成するのは例がないとかで」
 石造りの湯槽に浸かったカルトンが、人好きのする笑顔で話しかけてくる。
「昨日は世話になった。俺も楽しませてもらった」
 体についた汗を軽く湯で洗い流しながら、ロルフはカルトンに返事を返す。
 カルトンが湯船に入るように誘ったが、ロルフは体を流すばかりで近寄ろうともしなかった。
 ロルフの住む北方の遊牧民族では、入浴の習慣がない。
 体を湯で拭くことはあるが、風呂に入るのは苦手らしい。
「やはり、気に入られましたか。城の者は幻獣のことを悪く言うばかりで理解がありませんからな。
その点、ロルフ殿は違います。私の趣味をわかってくださる」
 幻獣を閉じ込めて性の対象にする商売というのはロルフも気に入ってはいなかったのだが、
カルトンはロルフも同好の士になってくれたと解釈したらしい。
「野で抱くとは違う面白さがあった」
「なるほど。確かに、どちらも趣があって楽しいですからな」
 カルトンが突き出た腹を揺らせて笑ったので、入っている湯船に波が立った。
「それでロルフ殿。今度、また幻獣屋に御招待しようと思うのですが、よろしいですかな」
 誘いの言葉に、ロルフは軽くうなずく。
 大人の体になったジェイミーがどんな感触か、確かめてみたかった。
「また面白い趣向を凝らしていますから。楽しみにしておいてください」
 体を拭き終わったロルフは、浴場から出ようとしたのだが、少し気になることがあったので、
足を止めて振り向いた。
「そう言えば、ハインツの妻のことなんだが……あれは魔女なのか?」
 ハインツの妻、フランチスカ。
 太り過ぎて肉を詰めすぎた腸詰めのようにしか見えない女なのに、ハインツはベタ惚れである。
 太った人間というもの自体を見慣れていないロルフには、ハインツが魔法か何かで騙されている
ように見える。
「魔女……そうですな。昔のフランチスカ殿は、紅い魔女と呼ばれていました」
 懐かしそうに浴場の天井を見上げ、カルトンがつぶやく。
「やはり。そうすると、ハインツは魔法にかかっているのか。聞いたことがあるぞ。百歳の老婆を
妙齢の美女に間違わせてしまう魔法の話を」
 訳知り顔にうなずくロルフの顔を見て、ハインツは首を横に振った。
「違います。昔のフランチスカ殿は、それはもう美しい女性で。彼女を妻にと望んで、
我が国だけではなく周辺諸国、遠くイカル・ドラギオからも屈強の騎士たちが集まったものです」
 ロルフの細い目が、驚きで見開かれる。
 イカル・ドラギオとは、この大陸最大のドラギオン帝国の首都だ。
「あっ、あの女をか?」
 太り過ぎて首が肉に埋もれ、頭に直接胴体がくっついているようなフランチスカ。
 そんな女性を求めて、男たちが集まるなどとはロルフには想像もつかない。
「ですから、昔は美しかったのですよ。そう、ミルダラ王妃も当時のフランチスカ殿の美しさには
かなわなかったでしょうな。美の化身、舞い降りた女神。詩人たちも競って、フランチスカの
美しさを讃えたものです」
「……」
 とても信じられなくて、ロルフの額に皺が寄っている。
 クローヴィス3世の妻、ミルダラ王妃は確かに美しい。
 水蜜桃のように大きな胸、引き締まった腰、そして冷たさを感じるまでに整った麗貌。
 それ以上にフランチスカが美しかったとは、全く想像できない。
「そんなフランチスカ殿の心を射止めたのが、若きドラギオン帝国の騎士ハインツ殿でした。
その愛は今も変わらず続いているというわけです」
 昔話を語り終えたハインツが溜め息をつく。
 ロルフもまた、溜め息をついた。
「とても、恐ろしい話だな」
「まったく」
 異国の戦士と老貴族が顔を見合わせて、人生の無常を嘆いている頃。
 ハインツは幸せだった。
 
「はい、あーなーた。あ〜ん」
「ほほほ、止めぬか、フランチスカ。照れるではないか」
 他の騎士たちも食事をしている食堂で、ハインツはフランチスカに遅い昼食を食べさせて
もらっている。丸太のように肥えた手で持たれたフォークの先へ刺さった肉団子に、
ハインツは恥ずかしそうにかじり付いた。
「う〜ん、美味しい。フランチスカは料理が上手だなあ」
「いやあ〜ん、あなたってばぁ」
(食べにくい……)
 同じ卓についている騎士たちは何とも言えぬ顔をして、その光景を目に入れないように
しながら、ナイフとフォークを動かしていた。


「んっ、んんっ……」
 押し殺したような切ない声が、扉の前から聞こえる。
「待たせ過ぎたか?」
 ロルフは何の躊躇もなく、自分の部屋の扉を開けた。
「きゃああっ!」
 予想通り、悲鳴で出迎えられた。ただし、悲鳴を上げたのはベッドの上にいるステラではない。
その側に、見たことがないメイドが立っている。
 ステラと同い年ぐらいで、彼女よりは背が高く、肉付きのいいメイドだ。
 大きすぎると思えるぐらいの緑色の瞳が特徴的だった。
 肩にかかる茶色がかった髪の上のメイド帽が、本人の驚きに合わせて揺れている。
「ステラ。こいつは誰だ?」
 ロルフがそう聞くと、うつ伏せになってスカートの奥に手を入れていたステラが、
欲情で潤んだ瞳を向けてきた。
「私の親友のシャーロットです。ロルフ様と話してみたいと言っていたから……あんんっ!」
 うつ伏せになっているステラに、ロルフは無造作に近寄った。そして、ベッドに腰掛けてから、
スカート越しに彼女の尻を揉んだ。太い指はすばやくスカートの布を掻き分け、ステラの
履いているパンティを押し分け、彼女の陰唇を刺激する。
 くちゅ、くちゅ、くちゅ……。
 ロルフが指を動かす度に、早くも湿った音が響く。
「なるほど。それで待ちきれなくなって、自分一人で始めてしまったというわけか」
「あっ、あくっ……そっ、そうです。帰ってくるのが待ちきれなく……ひうっ」
 ステラはベッドのシーツをつかみ、ロルフの指が陰唇をなぞる感触に耐えている。
「あの、私は……」
 シャーロットという名前の緑色の目のメイドは、紅く火照った顔で親友があえぐ姿を
見つめている。ロルフはステラの中に指を押し込みながら、シャーロットの顔を見る。
「無理矢理には抱いたりはしない。まず、おまえの友達が抱かれるのを見ていろ」
「えっ、あのっ……ロルフ様?」
 シャーロットに答える代わりに、ロルフはステラの履いているスカートをめくった。
 彼女の白い尻が、シャーロットの緑色の目に映る。
「いつもより濡れているな。見られて感じているのか、ステラ?」
「そっ、そんなの……ひぐっ。わっ、わかりません……うくぅ!」
 ロルフの指が膣口をなぞり、陰核を撫で、菊門の回りを叩く。
 引きちぎれそうなほどにベッドのシーツをつかみ、ステラは喘ぎ声を上げた。
「いや、濡れているぞ。自分でもわかるだろう」
 ステラが流し続ける淫液を、ロルフは太股になすりつけた。
「……ステラ」
 苦しそうに歯を食いしばり、何かを耐えているステラを、シャーロットは心配そうな
顔で見ている。ロルフは心配ないとシャーロットに目配せすると、体とベッドに挟まれて、
押しつぶされているステラの胸に手をやった。
「あふっ……ああ、ロルフ様……」
 ソフトな胸の刺激に移ったのが嬉しかったのか、ステラはシーツを離し、ロルフの
顔を見ようと首を後ろに向けようとする。
 だが、ロルフはそのままステラの胸を揉むようなことはせずに、彼女の体を乱暴に持ち上げ、
シャーロットに対面させるように、自分の太股の上に座らせた。
「あっ、やだ。ロルフ様。これでは全部、シャーロットに見えてしまいます」
 シャーロットは赤い顔をして、濡れそぼったステラの股間を見ている。その視線に気付いて、
あわててステラは脚を閉じた。
「そのつもりだ。親友なのだろう。隠し事はよくない」
 ロルフが意地悪く笑ったので、発達した犬歯が光る。
「だっ、駄目、ロルフ様。もっと普通に……きゃああああっ!」
 後ろからステラの膝の辺りを持つと、ロルフは高々と彼女の体を抱え上げた。
 自然にステラの脚は大きく開き、隠したかったところをシャーロットの眼前にさらしてしまう。
「いっ、いや、ロルフ様。こんなの、こんなのはして欲しくないです」
 だが、ロルフは意地悪い笑みを止めずに、ステラの膝をそのまま真下へ下ろす。
 その下で待ちかまえていたのは、いつのまにか剥き出しにされたロルフの剛直だった。
「やあああああ、駄目ぇええええっ!」
 ステラは悲鳴を上げたが、ロルフの亀頭は容赦なく、彼女の膣口に当たった。
 そして、後はそのまま重力がステラの体を剛直に貫かせていく。
 ずちゅ、みち、みちみちみち……。
「あふぁ!」
 いつもよりも激しい勢いで入っていく剛直の感触に、ステラの頭は限界まで仰け反る。
 ゴツンと音を立てて、ステラの後頭部がロルフの顔面に当たったが、ロルフは別に気にした
様子も見せない。
 みちみちみち……。
 ほどなくして、剛直全体がステラの中に収まった。
 限界いっぱいまでステラの入り口を押し広げている、ロルフの剛直。
 それを見て、シャーロットの緑色の瞳は興奮で潤んでいる。
「なんて綺麗……」
 シャーロットのつぶやきを聞いて、ロルフは後ろからステラの耳元でささやいた。
「綺麗だそうだ。よかったな、ステラ」
「あっ、や、うそぉ……」
 いつものようにステラが唾液を口からこぼし始めた。今日は頬に涙も伝っている。
 膝を抱えられたままのステラ。ロルフは彼女が挿入されたものに慣れたのを
確認すると、また膝を持ち上げた。
 みち、みちみちみち。
 限界まで広がった膣壁はロルフの肉棒に絡みついていて、上まで持ち上げられた時、
中の壁がめくれ上がって外に出ているのが、シャーロットに見えた。
「あぁん、あぅ、あふぅ……ふぁぁあ!」
 また、ロルフがステラの膝を真下に降ろした。
 ずちゅ、ずちゅずちゅ……。
 めくれ上がった内壁が、巻き込まれるようにして剛直の表面を滑り、ステラの中へと
入っていく。無理なく動かすことが出来るとわかると、ロルフは思うようにステラの膝を
動かし始めた。激しくステラの頭が揺れ、だらしなく開いた口から唾液が散る。
 それはシャーロットの顔にもかかったが、彼女はそれを汚いとは思わなかった。
 ずちゅ、ずちゅずちゅずちゅずちゅずちゅずちゅ……。
 激しい上下運動が続き、ステラも快感を貪るようにして、メイド服の上から自分の
胸を揉んでいる。
「あ、ああ。弾ける、弾けそぉ……ロルフ様ぁ……ああああっ!」
 ステラの中はいつもより濡れていて、興奮のために激しく蠢いている。
 ロルフもまた、激しい快感を味わっていた。
 背骨を伝って、快感が登ってくるのを感じて、ロルフは息を止めた。
 
 びゅる、びゅるびゅる!
 
 白濁液が鈴口から噴出され、ステラの膣内を満たす。
 同時に、絶頂に達したステラの体が力を失って、がくりとロルフの胸に向かって崩れ落ちた。
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 激しい絶頂の後で息を切らすステラ。
 汗だくになってベッドに横たわった彼女の髪を、シャーロットが優しく撫でていた。
「どうだ。おまえもやってみるか、シャーロット?」
 一度放ったはずのロルフの剛直はすでに固さを取り戻していて、シャーロットがうなずくのを
待っている。シャーロットは目を丸くして、ステラの愛液に濡れた剛直を見つめた。
「その……私、こういうことはしたことがないんです。初めての時は、とても痛いのでしょう?」
 初めてと聞いて、ロルフは大きく笑った。
「気にすることはない。このステラも、俺に出会うまでは男を知らなかったぞ」
 そう言いながらロルフが尻を乱暴に揉んだので、ステラの肩がビクンと震えた。
「ステラ……どうだった? 初めての時は痛かった?」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 顔を覗き込むようにして聞くシャーロットの言葉に、ステラは荒い息を吐きながらうなずいたので、
シャーロットの顔が不安で曇った。
「はぁ、はぁ、はぁ……大丈夫よ、シャーロット。私も、すぐに気持ち良くなったから……」
 不安げに握りしめられているシャーロットの手を、上からステラが握る。
 暖かさが伝わり、シャーロットの緑色の目から不安が消えた。
「……ロルフ様」
「そうか。その気になったか」
 シャーロットは静かにロルフの側に近寄ると、唇を重ねた。
 合わせるだけのキスだったが、ロルフは黙って受け入れる。
「優しくあげてくださいね」
 ロルフはうなずくと、シャーロットの肩をつかみ、彼女をベッドの上に押し倒した。
 
 耳元から始まって、徐々に下へと降りてくる愛撫。
 ロルフの鍛え上げられた体の重さを感じながら、シャーロットは体を震わせる。
 ステラたちメイド仲間から話を聞いたことはあったが、男性に抱かれるというのは
何と心地よいことか。甘い刺激に満たされて、シャーロットの息が熱いものに変わっていく。
「くっ、うっ、うう……」
 振り絞るようなシャーロットの声を聞きながら、ロルフはまだ誰も触れたことのない
シャーロットの秘唇に舌を這わせた。ステラと比べると、シャーロットのものは肉厚で
ぽってりとしていて、大人として成熟しているように感じられる。
「くふっ、うぁあ……」
 蜜の量はステラよりも少ない。だが、性器が成熟している分、挿入は楽そうだった。
 舌の先で陰核をつついてみると、シャーロットの体はビクンと震える。
 もう大丈夫そうだ。
 ロルフはそう判断すると、シャーロットの脚を開かせ、その間に割って入る。
「くぅ……あっ、ロルフ様……」
 期待と不安に満ちたシャーロットの緑色の瞳が、ロルフの顔を見つめる。
「力を入れるな。我慢できなくなったら、すぐに言え」
 神妙な表情でシャーロットはうなずく。
 すぐに、亀頭が膣口に当てられた。
「大丈夫よ、シャーロット。私がいるから」
 いつの間にかステラが顔の横に座って、手を握ってくれている。
「ステラ……」
 シャーロットが嬉しそうに微笑んだ瞬間、ロルフの剛直は彼女の秘唇を押し分けて入ってきた。
 じゅぷ。
「……いっ、痛っ、痛ーーーーーいっっっ!」
 処女膜はすぐにロルフの剛直とぶつかり、その薄い膜は引きちぎられそうになる。
 生まれて初めての激痛に、シャーロットは大きな悲鳴を上げて、ベッドをずり上がり、
逃げようとする。だが、ロルフは彼女の肩を大きな手でつかむと逃げられないようにして、
一気に腰を押しつけた。
 ぐっ、ぐぐぐぐぐぐ……。
「いっ、いやぁああっ! 痛い、痛いです、ロルフ様っ! ……あっ」
 悲鳴を上げながら激しく首を横に振るシャーロット。その動きが突然、止まった。
 何かにぶつかって止まっていた固いものがそれを押し破り、中へと入ってくる。
 初めての感覚に、激痛を忘れて戸惑うシャーロット。
 そして、シャーロットは自分が女になったことを悟った。
 
 処女特有のきつい締め付け。
 ベッドを破瓜の血が赤く濡らしているのを見て、ロルフは一息ついた。
 シャーロットが落ち着くまで待っていたが、ステラの時と違って、最後まで痛がることはない
ようだ。涙に濡れた頬はもう、乾き始めている。
「……ロルフ様」
 破瓜の激痛はまだ続いているようだが、何かを耐えているような声で、シャーロットが
呼びかけてきた。軽く、爪でロルフの胸を掻いている。もう、大丈夫だということだろう。
「動いてもいいのか?」
「はい……もう、大丈夫みたいです」
 それでも不安そうに言うシャーロットの様子を見ながら、ロルフは慎重に腰を動かした。
 破瓜の血で赤く染まった剛直が、静かに前後運動を始める。
 じゅぷ、じゅぷじゅぷ……。
 ステラのように剛直にまとわりついてくることはないが、シャーロットの中は起伏に
飛んでいて、別の心地よさがある。
「……くっ、くふぅ、ぁああ……」
 ロルフはステラの声に合わせて、段々と速度を速めていった。
 
 その様子を、ステラが羨望の目で見ている。
 今のシャーロットのように感じるようになるまで、ステラは五日かかった。
 最初の頃はロルフに優しくしてもらえるのが嬉しくて、それだけで通っていたのに。
 シャーロットはもう、女の喜びを全身で感じている。
 ステラは、ロルフに貫かれているシャーロットの顔を膝を立てて跨ぐと、
ロルフの顔の前に自分の股間を持っていった。そして、ためらいなくスカートをめくる。
「ロルフ様。私も可愛がってくださいますよね」
「欲張りだな。さっきまで、いやだ、駄目だ、と言っていたのに」
 苦笑しながら、ロルフは舌を出す。それに股間を押しつけると、ステラはロルフの頭を
抱え込んだ。
 シャーロットは潤んだ目で、すくい上げるようにしてステラの秘唇を這う、ロルフの
舌の動きを見つめている。

 鼻の先で陰核をこすり上げ、舌の先でヒダをつつくと、ステラは頭をきつく太股で
挟んでくる。
 いつものように腰を動かしているが、シャーロットはもう充分感じているようだ。
「……くふぁ、くっ、ううっ……」
 ロルフは充分な快感をシャーロットから貪ったのを確信すると、最後のスパートを
かけるために激しく腰を動かし始めた。
「……くぁ、うああああああっ!」
 シャーロットの腰が跳ね上がり、予想外の刺激をロルフの剛直に与える。
 途端、ロルフは精液をシャーロットの中へと放っていた。
 
 どぴゅ、どぷ、どく……。
 
「ふぁ、ふあああ、ロルフ様。私も……弾けそう……ふああああっ!」
 一拍遅れて、ステラもそれに続いた。
「初めてで感じる女は見たことがない。才能があるな」
 ロルフにそんなことを言われて、身支度をしていたシャーロットは赤い顔を下に向けた。
「……そっ、そんなことを言われても、恥ずかしいだけです……」
「恥ずかしがることはないわ、シャーロット。私、あなたが羨ましいもの」
 本当に羨望が混じった声で、ステラは言う。
「あの……不思議なんです。痛いのですが、痛いのが気持ちいいと言うのか。とても、
不思議な感じでした……」
 正直に感じたままの言葉を聞いて、ロルフは笑う。
「変わった奴だな。だが、いい女だ。俺でよかったら、いつでも相手をしてやる」
「ロルフ様。私が一番ですからね。忘れては嫌ですよ」
 すねたように言うステラの黒い髪を、くしゃくしゃとロルフは掻き混ぜた。
 あんまり強くロルフが掻き混ぜたので、ステラが悲鳴を上げる。
「……ふふっ」
 子供のように振る舞うステラの様子を見て、シャーロットは優しく微笑んでいた。
 
 
 夕食を取ろうとロルフが部屋を出ると、部屋の外で珍しい人物が彼を待っていた。
 白い神官服と丸眼鏡の奥に光る、きつい瞳。
「イクサーの司祭か。何の用事だ?」
 ロルフが面倒くさそうに話しかけても、返事はかえってこない。
 彼を待っていたのは、彼を目の仇にしている女司祭、ユリアーネの家庭教師のメイベルだった。
「……用事がないのなら行くぞ。俺は腹が減っている」
 自分をにらみつけている理由がわからないので、ロルフは彼女に背を向けた。
「また、城の女に手を出されたのですね」
 ステラとシャーロットのことを言っているのだろうか。
 前にも、ステラを初めて抱いた頃に、メイベルが文句を言ってきたような覚えがある。
「俺は男だ。男が女を抱くのは当たり前だ」
 振り向いて、ロルフもメイベルの瞳をにらみ返した。
「ここは北方の荒野ではありません」
 固い声。ロルフの細い瞳ににらまれて震えてはいるが、怒鳴りつけたぐらいで逃げ出しそうにはない。
「城だから上等だとでも言うつもりか?」
「規律を守って下さい、と言っているのです」
 そう言うメイベルの瞳は、ロルフの過ちを正すのが当然だという決意に満ちていた。

 やはり、尼僧は可愛げない。

 ロルフはメイベルを追い払うことをあきらめ、彼女を無視して食堂へと歩き出す。
「お待ちなさい。まだ、話は終わっていませんよ」
(いくら、外見がいい女だとはいっても、あんなに頭が固くてはな)
 メイベルの怒った声を背中に受けながら、ロルフはその場を後にした。
                                                                                                                                                                  

   


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