ガタガタガタガタ……。
 ひび割れた石畳の上を、木の車輪が回っている。
 夜のベルナールの城下町を走る馬車。
 中に乗っているのは、老貴族カルトン公爵と異国の戦士ロルフ。
「随分と窮屈な乗り物だな。頭がつかえる」
 実際に天井に頭をこすりそうになりながら、ロルフは真向かいの席に座っているカルトンに
文句を言った。それを聞いて、愉快そうにカルトンは笑う。
「本来なら、公爵家の馬車を出すところですが。幻獣屋に行くのに、公式の乗り物を使うわけには
行きませんからね」
「そんなものか。面倒くさい国だな。俺たちの族長など、自ら若い者を引き連れて、牝の幻獣を
抱きに遠駆けしたものだがな」
 ベルナールにはない異国の風習を聞いて、突き出た腹がつかえるのも構わず、カルトンは
身を前に乗り出した。
「やはり、ロルフ殿の国では幻獣は捕まえて犯すものなのですか? そして、その後は、そのまま
逃がしてしまう?」
「人を殺したことがない幻獣は殺さない。当たり前のことだ」
 プライベートの場では敬語を使わないのか、ロルフは公爵であるカルトンの前でも淡々とした
言葉使いだった。
「なるほど。理屈にはかなっておりますなあ。我が国では、幻獣は領地を荒らす厄介者。
見つければ退治するのが当然。一部の者が幻獣屋を開いて捕まえた幻獣を働かせておりますが、
大半は処分されてしまいます」
「ふむ。野蛮だな」
 普段、文化程度が低いと決めつけている北方の遊牧民。その出身の者にそんなことを言われて、
カルトンは奇妙な喜びを感じた。
「この国は狭いくせに人が多い。だから、そんな野蛮な風習があるのかも知れない」
「ははは。まことに。幻獣とはいえ、生き物は生き物ですからな」
 草原でグリフォンを組み敷き、思いのままに腰を動かすロルフの蛮行を思い浮かべながら、
カルトンはにっこりと笑った。

 「ギャミル・ハウス」
 けばけばしいショッキングピンクの看板には、そう店の名前が書かれていた。
 店の造りは割としっかりしていて、建物は丈夫な石を積んで造ってある。
「ここが幻獣屋か。浮かれ女が出てきそうな店だな」
 馬車の窓から建物を見上げて、ロルフがそんなことを言った。
 浮かれ女とは売春婦のこと。確かに、怪しげな明かりが灯る店内から、化粧の臭いがする
女たちが出てきてもおかしくはない。
「そうですな。人間の女の代わりに幻獣の牝が出てくる。それだけのことです」
 カルトンも同じように見上げていると、馬車はその店の前で止まった。
 すると、すぐに中年の男が店の中から飛び出して来て、腰を曲げ、揉み手をしながら、
馬車の方へとすり寄ってきた。
「これはこれはカルトン様。毎度のごひいき、ありがとうございます」
 手慣れた様子で、おそらく、この店の店長であろう男が扉を開ける。
 すると、中から見たことのない赤銅色の肌の大男が出てきたので、男は腰を抜かしそうになった。
「ひっ、ひええ。か、カルトン様?」
「驚かせてしまったね、ギャミル。この方の名前はロルフ。いずれベルナールで有名になる戦士だから、
名前をよく覚えておきなさい」
 腰を抜かしそうになった男、ギャミルにそう話しかけると、カルトンはまったく躊躇することも
なしに店の中へと入っていく。ロルフは黙って、その後に続いた。

 長いソファーが置かれている待合室。
 すでに何名かの男性が、待ちきれない表情をして自分の順番を待っている。
「さあ、お選び下さい。どの子も、しっかりと調教していますからね。きっと御満足いただけますよ」
 にやけ顔、もしかしたら愛想笑いなのかもしれないが、そんな表情をしながら、ギャミルは
ソファーに座っているロルフとカルトンにメニュー帳を渡してきた。
 メニューに載っているのは、名前と種族、簡単なコメントが書かれた名簿。
 時折、名前に赤い線が斜めに引かれているが、それは指名できないということだろうか。
 
 スライム      ジェイミー  値段からは信じられないようなテクニック。夢の快楽。
 ケット・シー    タマ     毛並み抜群。尻尾が貴男の急所を直撃。
 ミノタウロ     ミルキー   幻獣屋定番の巨乳娘。埋もれたい方に。
 ケンタウロス    レピーナ   北方より直輸入。美脚娘。
 リザードウーマン  リディ    手つかずの新人。調教も最低限。新鮮さを貴男に。
            ・
            ・
            ・

 そんな調子で、名簿は続いていく。
 よくわからない、と言った調子でメニュー帳をにらむロルフ。それを楽しそうに見ているカルトン。
「ほお。このレピーナというケンタウロスは、ロルフ殿の国からやって来たとか。試されては
いかがかな?」
 ケンタウロスと聞いて、ロルフの顔が曇った。
「俺の部族ではケンタウロスは抱かない。馬は財産であり、家族だからな。それは自分の母親や
姉、妹を抱くような行為だ」
 北方の遊牧民には遊牧民なりのしきたりがある。ロルフが機嫌を損ねたのを見て、カルトンは
済まなさそうな顔でフォローをする。
「それは失敬を。無知はいけませんな。好意のつもりが、人の気持ちを害してしまう」
「いや、気にしていない。そうだな。俺はスライム、ジェイミーという名前の幻獣にしよう」
 そう言うと、ロルフはメニュー帳の一番上にある名前を指差した。
 スライムとは粘液で構成された流動状の体を持つ幻獣で、幻獣学上では原始的な分類に属する。
 その力は弱く、初心者の冒険者でも退治したり、捕獲したりできるほどだ。
 言ってみれば、庶民でも買えるような安価な幻獣だった。
「ロルフ殿。遠慮なさらずとも。グリフォンはいませんが、バジリスク・レディといった強者が
いますぞ。あなたのような強い戦士は、やはり強い幻獣を抱かなくては」
 そうでないと面白くない。
 そんなことを思いながら、カルトンは別の幻獣を強く奨めたのだが。
「抱き心地のよさと強さは関係がない」
 二の句を継げさせずに、ロルフはカルトンにメニュー帳を渡した。
「うーん。残念ですなあ」
「いえ、カルトン様。ジェイミーもなかなか曲者で、いい娘ですよ」
 慰めるように言うギャミルに力なく笑いかけると、カルトンはメニュー帳の一番下を指差した。
「私はマツ・ファンガス、チグサを頼むよ」
「はい。毎度のごひいき、ありがとうございます。では、しばしお待ち下さい」
 平身低頭で媚び笑いを浮かべながら、ギャミルは去っていく。
「この名簿に載っている幻獣は、全て、あの男が捕まえたのか?」
 そんなことはないだろう、と言った調子で、ロルフがカルトンに話しかけた。
「いいえ。狩人の中でも幻獣を専門に捕らえる者がおりますから」
「なるほどな。商売が成立しているわけか」
 そんなことを話しながら、ロルフたちが待っていると、ギャミルが小走りに駆け寄ってくる。
 待合室の奥にある通路を手で示す。通路には、左右に七個ぐらいずつ扉が付いていた。
「お待たせしました。カルトン様は一番奥の部屋に。そちらの立派な戦士様は、通路の右から三番目の
部屋にお進みください」
 急いで言い終えると、ギャミルは他に待っている客たちの方へ向かう。
「進めばいいんだな?」
「はい。そのとおりですよ」
 カルトンにうながされるまでもなく、ロルフはソファーから立ち上がると、ギャミルが指摘した
部屋へ向かって歩き始めた。

 ガチャリ。
 扉のノブを回すと、ロルフは部屋に入った。
 風呂代わりの大きな湯桶に、シングルのベッド。そして、様々な道具が置かれた物置台。
 最低限の調度品が置かれた部屋の中には、ユリアーネよりもさらに二、三歳も幼く見える少女が、
全裸のままで床に横たわり、無言でロルフを見つめていた。
「おまえがジェイミーか?」
 ロルフは少女の顔の前にしゃがみこむと、その顔をのぞきこむ。
 確かに、人間ではない。
 手や足、そして膨らみかけた胸は確かに少女のそれだが、少女の頭から伸びる青い髪は、
よく見ると髪ではなく、流動する粘液だった。髪代わりの粘液を染める青色はとても鮮やかで、
不潔な感じはしなかったが、少女の幼い裸を見て、ロルフは彼女に手を出すことをためらっいた。
 沈黙に耐えかねて、スライムの少女ジェイミーは口を開く。
「あたしの名前はジェイミー。お兄さんの名前は?」
 テラテラと青く光る髪、そして、その肌も部屋の明かりを反射して、淫靡な光を発していた。
 どうやら、ジェイミーの体全体が、ローションのような粘液に覆われているようだ。
「ロルフだ。これから、おまえを抱く。いいな?」
 そう言うロルフの表情は、有無を言わせない迫力があったのだが。
「この部屋に来る男の人は、ギャミルおじさん以外はみんな、あたしを抱いていくよ」
 当たり前のことだよ、と、ジェイミーは言っているらしい。
 何だか気がほぐれたロルフは、黙って服を脱ぎ始めた。
 床に脱ぎ捨てた服を、ジェイミーがいそいそと備え付けの籠の中へと入れていく。
 全て脱ぎ終わると、赤銅色に焼けた肌をジェイミーに見せた。
「お兄さん、元気がないね」
 実際、ジェイミーの指摘する通り、ロルフの肉棒は力を失っている。それでも大きいのだが、
ぐにゃりと下に垂れ下がった姿は、何だか情けない。
「無理を言うな。まさか、俺もおまえのような子供が出てくるとは思わなかったからな」
 苦し紛れに言うロルフは、床に横たわっているジェイミーの前に座った。
 貧相な胸、細すぎる腰。そして、あどけない子供の顔。どれもロルフの食指をそそるものではない。
「あたし、子供の姿をしているだけで子供じゃないよぉ」
 不満そうな顔をすると、ジェイミーは横たわったままで床を滑るようにして、ロルフの体に
近寄っていった。
 ぐちょ。
 無造作に、ジェイミーの小さな指がロルフの肉棒をつかむ。
「うっ」
 粘液に濡れた指に敏感なところをつかまれて、ロルフがうめき声を上げた。
「ここは人間でも正直だよねぇ」
 楽しそうに笑うと、ジェイミーはロルフの肉棒を刺激するような真似はせずに、周囲の陰嚢、
会陰部、肛門の周囲といったところを指でくすぐり始める。
 粘液で密着度が上がった表面を、細い指先が遊ぶ。
「ほら、ほらぁ」
 ジェイミーの指で弄ばれたロルフの股間は、すぐに肉棒を垂直に屹立させた。
「うん、元気になった……うわ。大きいね。お兄さんのオチンチン」
 それまで主導権を握っていたジェイミーの顔に、軽い驚きが走る。
 その体と同じように黒ずんでいて、たくましい剛直。
 初めて見る大きさだ。
「そうかもな」
 その隙を逃さずに、ロルフはジェイミーの小さな爪先をつかんで、彼女の股間を自分の顔の
ところまで引き寄せていった。
「うわ、きゃあ! お兄さん、無理矢理は駄目だよ」
 ロルフが爪先をつかんで上に掲げているので、ジェイミーはロルフの顔に股間を押しつけて、
逆立ちするような格好になっていた。
 閉じきって縦の線のように見えるジェイミーの陰唇に、ロルフが舌を這わす。
「ひゃあっ……あ、あぁん」
 最初は驚いていただけのジェイミーの声に、徐々に淫らな香りが漂ってきた。
 陰唇も開き始め、ピンク色の小さな花がロルフの顔の前で開花していく。
「あっ、ああん。すごい。お兄さん上手ぅ」
 嬉しそうなジェイミーの声。
 逆さまに吊られて股間を舐められても感じてしまうのは、度胸の良さから来るのかも知れない。
「んっ。お返しっ」
 ちゅ。
 上下逆になったジェイミーは、すでに頬を赤く上気させながら、ロルフの肉棒に舌を這わせた。
 ずる、ずる、ずるり。
 子供のような顔からは想像できないほど厚ぼったい舌が、肉棒の周囲を包むようにしてうごめく。
すぐに肉棒はジェイミーの唾液で覆われて、ぬめった光を放ち始めた。
 ジェイミーの小さな口では、ロルフの大きな肉棒を喰わえ込むことは出来ない。
 その代わりに、ジェイミーは厚い舌を黒光りする茎に這わせて、舐め上げ、舐め下ろしていた。
 ずる、ちゅる、ちゅるり。
 淫らな花の香り、生暖かく絡みついてくる舌の感触、粘液がうごめく音。
「確かに、子供ではないようだな」
 ロルフの言葉に、ジェイミーは舌を上下させるのをやめて、嬉しそうに笑いかけた。
「お兄さん。もう準備は出来たみたいだね」
 爪先をつかまれて逆さ吊りにされていたジェイミーが、ゆっくりと床に下ろされる。
 ジェイミーは上半身だけ身を起こすと、トロンとした目でロルフの細い目を見つめながら、
その細い足を開いてみせた。
 ピンク色の秘唇は息づき、ぬるぬるの愛液に濡れている。
「ねえ、お兄さん。ここに欲しいの。ずぶずぶして欲しいの」
 その誘いの言葉に、ロルフは軽くうなずいて、筋肉で盛り上がった体を重ねた。
 ずにゅり……。
 太過ぎる剛直が、ジェイミーの小さな膣の中に入っていく。
「あふぁっ! すっ、すごい! お兄さんの大きい……んんっ!」
 歓喜の声を上げて、ロルフの背中越しにジェイミーの体がのけぞる。
 彼女の小さな体からは汗のように透明な粘液が噴き出し続けており、ロルフの腹をぬめった
感触がくすぐった。
 幹が半分ほど埋まったところで、ロルフの腰が止まった。
「……あふ? どうしたの、お兄さん」
「先に、何か当たっている。つらくはないか?」
 長く太い肉棒はジェイミーの小さな性器では飲み込み切れないのか。ロルフの亀頭は
半分を残して、すでにジェイミーの内奥に当たっていた。
「んんっ……大丈夫だよ。あたしの中って小さいけど、その分、伸びるから」
 確かに、つらそうな様子はない。
 耐えきれないように腰をわずかに揺らして、ジェイミーはロルフの突入を待っている。
「わかった。痛かったら、すぐに言え。無理をすることはない」
「ふふっ……優しいんだね、お兄さん」
 愛おしそうに、ジェイミーの小さな手がロルフの頬を撫でた。
 その手がビクンと震える。
「くぅぁぁああっ!」 
 ロルフが腰を前に突き出すと、ジェイミーがのけぞって悲鳴を上げた。
 ずにゅ、ずにゅずにゅずにゅ!
 粘膜がこすれ上がる音と、粘液が飛沫になって床を跳ねる音。
「すっ、すごい。お兄さんのもので、あたしの中がいっぱいになっているぅ!」
 肉棒の根本に生えた陰毛が当たって、クリトリスを刺激している。
 驚くほど淫らな笑みを浮かべて、ジェイミーは歓喜を表した。
 男根にまとわりつく膣壁は、その喜びを表すかのように蠢動してロルフを刺激する。そして、
限界まで広げられた膣口は、尿道を圧迫するほど、きつく締まっていた。
「大したものだ。全部、飲み込めたか」
 感心するロルフの乳首に、ジェイミーは舌を這わせた。本当はキスがしたかったのだが、
身長差がありすぎて届かなかったのだ。
(早く動いて)
 円を描くようにして乳首の上を這う舌は、そう言っているようだった。
 ずちゅ、ずちゅ、ずちゅ。
 ロルフが腰を動かし始めた。
「あっ、あん、あひゃん! すごい! お兄さんのすごい!」
 ジェイミーの大きな喘ぎ声が響く。肉棒が出入りしている今も、その中はうごめき続け、
ロルフに快感を送り続けていた。
 ずちゅずちゅずちゅずちゅ……。
 部屋の中に響く、淫靡な粘液と粘膜が擦れ合う音。
「あっ、あっ、んああっ! もっと、もっと奥まで! お兄さん、もっと!」
 響き続ける、ジェイミーの歓喜の声。
 ロルフの赤銅色の背中に、薄く汗が浮いた。
 じゅるん。
 何の前触れもなく、ジェイミーの細い脚がロルフの腰に絡みついてくる。
 ずちゅずちゅずちゅずちゅ……。
「すごい! お兄さんのオチンチンすごい! 溢れる、溢れるよぉ!」
 夢中になったジェイミーの脚が絡みつき、ロルフの脇腹をくすぐる。そして、爪先は
なおも快感を与えようと、ロルフの尻の辺りに這い寄ってきた。
 右の爪先は陰嚢を、左の爪先はアナルをくすぐる。
「……なるほど。メニューに書いてあったのは嘘ではなかったようだな」
 夢の快楽。なんとも言えない多処責めの感覚に、ロルフはうめいた。
 ずちゅずちゅずちゅずちゅ……。
「おっ、お兄さん! もう駄目! 駄目だから、あたしの中に来てっ!」
 切なさが極まったジェイミーの声。
 すでに限界に達しようとしていたロルフは、否応なく、その声に従った。
 
 どぴゅ、どぴゅ、どく、どくっ!
 
 根本まで入ったロルフの男根が、ジェイミーの中に白濁液を吐き出していく。
「あっ、んんんんんんっ!」
 絶頂に達したジェイミーの脚が、それでもロルフの吐精を一滴でも逃すまいと、
彼の腰を強く、強く引きつける。
 吸い寄せられるような感覚に、ロルフも強い快感を感じていた。
 
 一戦、終わって。
 ベッドに腰掛けたロルフは、ジェイミーの青く濡れた髪を撫でてやりながら、
その幼い外見に似合わない性技の巧みさを褒めていた。
「久しぶりに、女を抱くのに夢中になった。おまえは、いい女だ」
 率直な褒め言葉に、ジェイミーは外見相応のあどけない微笑みを浮かべる。
「お兄さんこそ。あんまり気持ち良すぎて、お仕事忘れちゃうところだった。
ほら、見て。お兄さんからもらった精気が体中に満ちあふれているよ」
 ジェイミーはまだロルフの精液を垂れ流し続けている自分の性器を指差した。
そして、垂れ流れた精液はベッドのシーツを濡らすことなく、太股を伝い落ちた後、
ジェイミーの肌の奥へと吸収されていく。幻獣スライムであるジェイミーの体が、
ロルフから受け取った精気を食べている証拠だった。
「幻獣、精気を喰らう存在か。おまえを見ていると、とてもそんな風には思えないが」
 ロルフのつぶやきに、ジェイミーは口をとがらせ、不満を言った。
「人間は、あたしたちのことを怖い、怖いって言うけど。人間も怖いよ。あたしたちを
閉じ込めて、仕事の道具にしちゃうんだもの」
「そうだな。確かに、人間も幻獣も質の悪さでは、あまり変わらないか」
 くくくっ、と発達した犬歯をのぞかせて、ロルフが笑う。
 ジェイミーは悪戯っぽく微笑んで、その唇にキスをした。
「お兄さん……まだ、大丈夫なんでしょう? カルトン様のお連れだから、今日は
いっぱいサービスしろって、ギャミルおじさんに言われているの。ねえ、いいでしょう?」
 肉棒はすでに、元気を取り戻している。
「無理だったら、すぐに言えよ」
 ジェイミーの肩を抱いてベッドに押し倒しながら、ロルフは念押しをする。
「もう。まだ子供扱いするの?」
 冗談めかして笑いながら、ジェイミーはまた、ロルフの唇にキスをした。

 
 その頃。
 一番奥のVIPルームで、カルトン公爵も幻獣と戯れていた。
 部屋の中を覆う、たちこもるような淫靡な香り。
 ファンガスという菌類の幻獣の中でも最高クラスのマツ・ファンガスが出す、特有のアロマだ。
「たまりませんな。この香り、この感触。本当に、天国にいるようだ」
 カルトンが突き出た腹を揺らしながら、得も言われぬ表情で喜んでいる。
「カルトン様。もうそろそろ、お情けをくださいませんか?」
 老貴族のしなびた男根に舌を這わせながら話しているのは、マツ・ファンガスのチグサ。
 丸いボールのように見える独特の髪、そして、ファンガス特有の引き締まった細い体。
 角度を失った男根は元気がないように見えるが、カルトンの勃起はこれぐらいだった。
 白い指先でチクワほどの固さの男根をこすりながら、チグサは切なそうに吐息を漏らす。
「よし、よし。今日は異国の戦士と一緒だからな。私の蛮勇も見せてあげましょう」
 鼻孔を刺激する淫靡な香りとチグサの誘いに押されて、カルトンは太った腰を起こした。


 チ、チチチチチ。
 窓の外で、小鳥が鳴いている。
「んっ、ああっ、ああんっ……」
 ずちゅ、ずちゅずちゅずちゅ。
 他の客はすでに帰っており、ギャミルも他の幻獣も寝静まっている早朝。
 ロルフとジェイミーはまだ、交わりを続けていた。
 床はジェイミーの体から染み出す粘液で濡れ、ベッドも精液と愛液で液溜まりが出来ている。
「すごい。お兄さん、本当に人間? こんなに精気で溢れかえっているなんて……」
 後ろから貫かれているジェイミーは、喜悦の表情で背中越しにロルフを見る。
 数え切れないほど精を放ったはずなのに、その表情に疲労は見えない。
 いくらでも快楽を貪ろうと、ジェイミーの小さな尻に腰を打ち付けている。
「あぁ……また来ちゃう。波が来ちゃうよ」
 愛液で湿って柔らかくなったジェイミーの秘壺の入り口が締め付けを始める。
「んぁっ!」
 ジェイミーの小さな背中にのしかかるようにして、ロルフは再び精液を放った。
 どく、どく、どく……。
 まだ勢いを失わない奔流を放ち終わると、肉棒をジェイミーの中から抜く。
 名残惜しそうに締め付けを続ける小さな膣口は、ロルフの尿道に残っていた精液もすべて
搾り取り、ジェイミーの膣奥へと運んでいった。
 
「くっ……ううん」
 四つん這いの姿勢で倒れたまま、ジェイミーは尻を痙攣させている。
 もう吸収しきれないのか、ロルフの放った白い粘液がそのまま、膣口から出て太股を伝い、
床に垂れていく。
「おい、ジェイミー……さすがに、もう無理のようだな」
 失神しているのか、目をつぶって体を震わせているジェイミーの顔を見て、ロルフは
大きく体を伸ばす。
「幻獣屋か。大したものだ」
 心地よい気怠さが全身を覆っていた。
 このまま眠れたら、どんなに気持ちがいいか。
 ロルフはそう思ったが、床に崩れ落ちているジェイミーを、そのままにしておくわけにも
いかないので、彼女の体を抱き上げようと手を伸ばした。

 パシ!
 
 空間で何かが弾ける音。
 突然鳴った音に、ロルフはジェイミーへ伸ばしていた手を引っ込め、部屋の中を見回す。
 尻を上げて倒れているジェイミーと素裸のロルフ。部屋には、他に誰もいない。
 
 パシ、パシパシパシ!
 
 だが、部屋の中では何かが弾ける音が響き、その音は段々大きくなってくる。
「これは……」
 青く濡れた粘液で構成されたジェイミーの髪。
 それが生き物のように大きくうねると、一つにまとまり淡く輝き始めた。
 そして、ジェイミーの少女のような細い手足も大きく伸び始め、まるで急激に成長するかの
ように膨らみ始めた。特に顕著なのは、その胸である。まるで爆発するかのように急激に
盛り上がると、その固まりは女性特有の美しいラインを保ったまま、床に押されて潰れていく。
「ふぁああん」
 苦しげなジェイミーの声。
 心配してロルフが駆け寄ると、ジェイミーはうつ伏せで尻を上げていた格好からゴロンと
横に転がり、真正面からロルフの顔を見る。
「変成しちゃった……一晩、抱かれただけなのに。本当、お兄さんってすごい」
 それまでは子供のように丸く膨らんでいた頬が、すっきりとした大人の女性のそれになっている。
 瞳もまた、子供っぽさは消えて、麗しさが漂わせていた。
「ジェイミー。おまえなのか?」
「うん、そう。お兄さんの精気のおかげで、体も大人になれちゃった。嬉しいよ、本当に」
 内側から青く輝く、サファイアの髪。肉体は成人の女性のもので、しゃべり方だけが前のままだった。
 ロルフは信じられないものを見た、という表情で、まじまじとジェイミーの顔を見つめていた。
 
 
 程なくして、騒ぎを聞きつけた店主ギャミルが寝ぼけ眼をこすりながら、ジェイミーの
部屋へとやってきた。
「サファイア・スライム。スライムの代表的な派生種ジュエル・スライムの一種ですよ。
ゼリー状の部分が青く輝いているのが特徴でして。ほら、まるで宝石のサファイアのように見える
でしょう?」
 ギャミルの説明を受けながら、ロルフはまだ納得のいかない表情で大人になったジェイミーの顔を
見ている。
「お兄さん。なにが不思議なの? あたしたち幻獣はこうやって変成を続けて強くなっていくの」
「そうは言われてもな。実際に、この目で見るのは初めてだからな。随分、驚いた」
 そんなロルフの言葉を聞いて、いつの間にか後ろに来ていたカルトンが突き出た腹を揺らして
笑い声を上げた。
「私も長く生きておりますが、目の前で幻獣が変成するところなぞ見たことがありません。
いや、さすがロルフ殿。剣も女も強いのですなあ」
「そう。お兄さんのとっても強い精気のおかげで変成できたんだよ」
 邪気のないジェイミーの言葉にようやく安心したのか、ロルフは籠に入った服に手をやった。
「また、来る」
「うん。お兄さん、きっとだよ」
 ジェイミーの言葉に、ロルフは軽く、うなずきを返していた。
                                                 
                                                                                                                                                                  

   


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